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塾講師研修のススメ

今回は講師の研修にスポットを当てていきます。
多くのプロフェッショナル職種と同じく、塾業界でも昔は「わざわざ指導することはない」「背中を見て学べ」という風潮がありましたが、その方法は非効率で時間がかかりすぎますし、成長スピードは講師のセンスに大きく左右されます。なにより講師の負担が大きくなります。

「塾」は「質の高い授業」をサービスとして提供する場です。「質」を安定させるには、定期的かつ濃密な研修が必須となります。
以下では複数拠点を有する塾をケーススタディとして取り上げますが、単独経営の塾であっても同様の研修機会をそれぞれ設けていただければと思います。

講師研修の種類

ではまず、講師研修の種類から見て行きましょう。
講師研修といえば学習内容の研修がまず浮かびますが、他にも以下のような研修があります。
・契約直後研修
・ハラスメント防止研修
その他、拠点状況に応じて研修を行う場合があります。

全てに共通して言えることですが、研修を行う際には必ず資料・マニュアルを準備します。口頭のみの説明、いわゆる座学のみでは、講師の頭にもなかなか残りませんし、なにより何かあった時の振り返りが出来ません。研修は「実施することに意義がある」のではなく、講師の成長を促すためのものですので、そのための準備は惜しむべきではありません。

「契約直後研修」について

「契約直後研修」は講師を採用したおりに行うもので、「講師になった」ことを意識してもらう第一歩となります。
採用されたばかりの講師は、「子供に勉強を教える」以外、なにもわかっていない状態です。その「教える」作業を契約の上でしてもらうこと、対価が発生すること、「教える」上でしてはならないことを伝える場が「契約直後研修」となります。

まず、学習塾でどのような生徒を対象に、どのような指導を行うか、塾の方向性を伝達します。
方向性というと漠然としていますが、まずは「塾に通う生徒が何を目指しているか」をしっかりと講師に伝えていきます。
何年生を担当するのか?科目は何か?何分で授業するのか?生徒が目指す最終目標は何か?研修で伝えなければならないことは数多くあります。

また、塾のスタイルによっては、講師のほとんどが学生のケースもあると思われます。ほとんどの学生はそれまで「契約」を結んだことがありませんし、契約社会の中で仕事をしたこともありません。しっかりとした研修がなければ、契約履行上では非常識と思われることも平気でいたしかねません。特に個人情報や知的財産(作成テキストや指導法)の漏洩、盗用は塾にとって致命的なダメージとなります。

他にも、経営者-講師間でトラブルとして起こりやすい「契約内容」「給与・諸費用」について確認をします。「生徒指導後処理の時間に残業費は充てられるのか」、「有給休暇は発生するのか」、「扶養控除に関して」、塾によって様々なルールがあるかと思いますが、明文化して講師に配布・伝達をします。

「指導研修」について

「契約直後研修」が終わると、いよいよ実際の指導内容に踏み込んだ研修に入ります。
先ほど、講師は「子供に勉強を教える」ことしかわかっていないと書きました。では、本当に「勉強を教える」ことがわかっているのでしょうか。答えは否です。

講師未経験の状態では、「ただ前に立って、生徒の前で問題を解いている」だけで「教える」ことは全くできない状態です。「話す」ことと「人に聞こえるように独り言をつぶやく」ことが違うように、「教える」ことと「前に立って問題を解く」ことでは大きな違いがあります。

教科研修では、まず担当教科の理解を促します。ポイントとなるのは、授業前の段階で生徒がどこまで学習を進めているのか、という点です。例えば生徒が小学生にも関わらず、講師が方程式を使った解法を用いている、これではほとんどの生徒は授業内容を理解することが出来ません。まず講師には、生徒がどこまでの処理能力を有しているかを伝えたうえで、適切な指導法を知ってもらいます。

また、教科指導のポイントを伝えるほかに、学年や子供のタイプに応じた指導テクニックについても触れます。集団授業であれば例えば黒板の使い方、授業中の目の配り方、個別指導であれば授業と問題回答との時間バランス等、指導において重要なポイントはいくつもあります。マニュアルを見せる、先輩の授業を見せる、ロールプレイングを実施する、色々な形の研修が考えられますが、その塾に合った方法を見つけていただければと思います。

なお、「教科研修」に関しては、講師に定期的な参加を促していく必要があります。テキストの改訂や学校指導要領の改定等、学習内容が塾の外部から変化していくケースは多くあります。また、講師の指導教科・学年等変更時には、その変更に合わせた研修参加を適宜促していきます。

「ハラスメント防止研修」について

ハラスメント研修は、あらゆるハラスメントに対しての勉強の機会となります。

講師は経営者・他講師・生徒・生徒保護者と多くの人と関係を持ちます。その中で、ふとした言動で不快感を持たれるケースがあります。ハラスメント研修では、その「ふとした」を減らす狙いがあります。

ハラスメントというとまずセクハラが有名ですが、モラルハラスメント、スクールハラスメントとハラスメントの種類は多数あります。それぞれのハラスメントに対して具体的な実例を交えることで、「してはならない」ことの線引きを図ります。

こちらも教科指導研修と同じく、定期的な研修実施が必要となります。ハラスメントの意識は日に日に薄くなりがちです。研修は意識する機会を増やし、「してはならない」ことを改めて思い起こす場となります。

拠点研修の重要性

上記研修を全て実施しても、指導の場に立った講師がトラブルを抱えることは珍しくありません。
トラブルの内容は授業の内容から保護者とのトラブルまで様々。時には講師自身が指導に関して自信をなくしてしまい、授業が手探りとなってしまうケースもあります。
ここで、各拠点での研修の重要性が出てきます。

前述の3研修は、複数の講師に対して同内容の研修を行います。そのため、講師形成という大枠での目的は達成できますが、個々の状況に応じた内容は研修できません。それに対して、拠点研修では個人あるいは少人数に対して、拠点長あるいは経営者が研修を実施します。そのため、講師個人の抱えるトラブル、あるいはその拠点内で抱えるトラブルに対して、柔軟に対応できるという特性があります。

内容に関しては個々のトラブルに応じての形となりますが、経営者の理念・経営と反していないことが絶対条件です。拠点研修は重要ですが、経営方針と研修とで内容のズレがあってはいけません。経営者以外が拠点研修を実施する場合には、必ず経営者への報告を欠かさないようにするルールを設定する必要があります。

以上、研修について書いていきましたがいかがでしょうか。
特に個別指導の場合、講師不足が慢性化しやすいことから、いきなり指導の現場に投入するケースも珍しくはありません。ただし、しっかりとした研修を行わない状況での指導は質に問題が生じますし、なにより塾の信頼を損なうリスクが高くなります。
講師の研修は計画的に行わなければ、なかなか成果を上げづらいものです。年間で計画立った講師研修実施をお勧めいたします。