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なぜ個別指導塾が増えるのか

なぜ個別指導塾が増え続けるのか。
かつては1クラス40人~50人という集団授業は普通の光景でした。全国規模のテスト塾や大学受験の予備校では、1クラス200人~300人という状況もありました。ところが現在では大人数の塾・予備校は激減し、少人数制や個別指導が大流行りです。この原因は少子化にあるという理解もできますが、本当にそれだけでしょうか。
個別指導が流行る原因を理解することで、保護者対応や経営におけるヒントが得られるはずです。

少子化と価値観の多様化

子どもの数が減り、学校の1クラスの人数も30人ほどの時代です。場合によっては、先生2名体制で授業を行うことさえあります。教室の前で全体の指導をする先生と、教室の中を回りながらクラスの全員が理解できるようにフォローする先生の2名体制です。このような公教育に対抗するとなると、塾としてはより少人数とならざるを得ず、行きつく先は個別指導なのです。

更に大学進学が一般化していく中で、大学に行きさえすれば将来は何とかなるというような発想が消え去りました。つまり、何がなんでも一流大学を目指すという激しい受験戦争に、ポジティブに背を向ける価値観が生まれたのです。もちろん一流大学を目指さなければいけないという価値観は依然と残っています。しかし、その考え方に自ら背を向ける人々が増えたのです。

そうなると、大人数の画一的なカリキュラムでは対応できません。無理をしてそのカリキュラムについていく必要性がないからです。その結果、生徒一人ひとりを主体としたカリキュラムの要求に応えていかざるを得なくなったのです。

保護者もかつては塾に通っていた「生徒」だった

保護者もかつては塾に通っていた「生徒」なのです。彼らが塾に通っていた頃、個別指導よりも集団形式の授業が一般的でした。補習塾と呼ばれる塾を除けば、学校よりも早いカリキュラムで学習し、より難しい問題にチャレンジしていたはずです。理解できないと、「生徒が悪い」と評価されることさえあったような時代です。解らないことを先生に質問できないと、そのことさえ「生徒が悪い」とされたような時代です。進学塾の授業についていけないからと、更に補習塾に通う子どももいました。当時はそれが当たり前の時代であり、それだけ受験戦争が厳しい時代だったと言えます。今から思えば教える側は楽だったのかもしれません。今の時代、そんなことは絶対にできない状況です。

そういう当時の子どもたちが大人になり、親となって今、子どもを塾に通わせているということを再確認しておきましょう。
おそらく当時の状況を善しと思っている保護者は、少数派です。大多数の保護者は否定的に捉えているからこそ、個別指導塾へのニーズが高まっているのではないでしょうか。

個別指導は弱者の指導ではない

今までみてきたように、保護者はポジティブに個別指導を選択していると考えるべきです。昔のように、苦手を克服するための家庭教師的な意味合いで利用するケースもあるかもしれませんが、今では「塾=個別」という認識で通わせているケースが多いのです。

つまり、個別指導に子どもを通わせる保護者の狙いは、「理想の学習環境の確保」「学習の効率化」なのです。ただカリキュラムを消化していくのではなく、その子のペースでしっかりと理解をして進んでいく。解らないことはその場で解るまで教えてもらうことを望んでいるのです。

個別指導塾の運営のし易さ

さて保護者の期待を担う個別指導塾ですが、運営のし易さという点では集団指導塾よりも圧倒的に楽だと言えます。
集団指導塾の講師は、オーケストラの指揮者でなければなりません。クラスの生徒の意識を自分に向けさせ、授業進行の中心となり、状況に応じた受け答えでカリキュラムを進めていく必要性があります。その講師を育てることが如何に難しいことか。集団授業の講師を育てるのは時間も労力もかかります。その点、個別指導の講師育成は生徒一人ひとりに適した対応をしていけば良いので、コミュニケーション能力があれば、大きな問題にはなりません。

また集団授業の講師は教室という密室で生徒と時間を共有することになりますので、その空間をどう管理していくかという管理責任の部分がデリケートなところです。場合によっては、研修内容を無視した独自の授業を展開するケースも出てきてしまう可能性がありますから、全てを任せるいう訳にもいきません。しかし管理し過ぎると、監視されているとか信用されていないというクレームになることもあります。ところが個別指導では、元々皆が同じスペースを活用しているので、全体を管理することは特別難しい話ではないのです。その場にいれば、どの講師がどの生徒に何を指導しているかを簡単に把握できます。聞き耳をたてて、こっそりアドバイスすることは普通にできることです。

まとめ

以上確認してきた通り、個別指導はもはや塾のスタンダード的なスタンスとなってきていますし、運営自体も集団指導塾と比較すると、圧倒的にし易いため、今後益々個別指導塾同士の争いが激しくなるでしょう。その競争を勝ち抜いていくために、塾のオリジナリティは絶対必要です。そのオリジナリティを形成する際に、保護者のニーズをしっかりと押さえておかなければなりません。勉強が苦手だから個別指導を利用するというような考えは過去のものです。そこを間違えてオリジナリティを形成しても、生徒を増やすことはできないと思われます。

Gaku

大学入学直後から塾講師のアルバイトを始め、大学3年時には大手の進学塾講師となる。そこで経験した「研修」に魅了され、週4日授業を担当して、学生ながら新卒の年収以上を稼ぎ出す。大学卒業後も、塾講師のやりがいを忘れられず正社員として大手進学塾に再就職。現場経験を計15年積んだ後は、本部職員として事業計画・売上予測作成や収納管理、人事、財務の経験を積む。現在は創業支援や外国人のビザ申請取次などをする行政書士として事務所を経営中(http://www.gaku-office.com/)。